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伊勢春日

/ VOILLD

ファウンダー/ディレクター

  • TOKYO

ギャラリー主宰者に聞く、ホテル×アートストレージの可能性

KAIKA東京の地下には、国内のアートギャラリーやアートコレクターが絵画や彫刻などさまざまな作品を収蔵展示するアートストレージが並んでいます。このアートストレージは、宿泊者だけが足を踏み入れられる特別な空間。ホテル開業の2020年以来、そこを倉庫兼第二の展示スペースとして活用しているのがアートギャラリー『VOILLD』です。今回はVOILLDを主宰する伊勢春日さんに、KAIKA東京のストレージの使い方や、楽しくまちを巡る視点について話をうかがいました。

KAIKA東京のアートストレージで「ダンジョン体験」を

──地下をアートストレージにして宿泊者限定で公開するという、KAIKA東京の空間の使い方をどう思いますか?

自分では思いつかない発想で、面白いなと思いました。アートに興味がなくても、宿泊をきっかけにアート鑑賞の機会が生まれる。思わぬ出会いが旅の豊かな体験にもなると思うので、とても素敵なことだと思います。

KAIKA東京の開業直後に宿泊させていただいたのですが、単に泊まるだけとは違った体験ができるホテルですね。地下のストレージだけを見ると“ホテルらしさ”がなくて、どこか“秘密基地” のような雰囲気があります。アートを見て回る行為に“ダンジョン感”があるというか……感性が刺激され、鑑賞に没入できる空間だと思いました。

KAIKA 東京のART STORAGE Photo by Takumi Ota

 

──KAIKA東京のストレージに入居する前は、どんなふうに作品を保管していたのですか?

VOILLDの近くに倉庫があったので、そことギャラリーの二箇所に分けて作品を保管していました。KAIKA東京が開業するタイミングで、プロジェクトに関わる方から「ぜひ入居してみませんか」と声をかけていただいたんです。それからストレージ兼第二のギャラリーとして、KAIKA東京を使わせていただくようになりました。

──5年間ストレージを使った感想を教えてください。

KAIKA東京に入居してから、展示の拠点が増えた感覚があります。五反田のVOILLDとは、鑑賞する環境も足を運ばれる方も違います。展示機会が広がったことで、作品をどう見せるかという意識の幅も広がったと感じています。ホテル自体が雰囲気のある素敵な場所なので、KAIKA東京にストレージがあることに興味を持ってくださる作家さんも多いです。アーティストの安田昂弘さんや加賀美健さんと一緒に来て、作品をインストールしたり、館内を回ったりしたこともありますね。

・上:片岡メリヤス「ハエごめんなさい」2025年|©2025 Meriyasu Kataoka/VOILLD VIEW Inc. All Rights Reserved

・下:西雄大「BLUR」2025年|©2025 Yudai Nishi/VOILLD VIEW Inc. All Rights Reserved

 

普段は見られない「作品の舞台裏」を楽しんで

──KAIKA東京のストレージでは、具体的にどんな見せ方を意識しているのですか?

宿泊者からしたら、「思いがけずアート鑑賞ができた」という場所だと思うので、どんな人が見ても興味を持てるような、パッと目を引く作品を意識して置いています。VOILLDで発表させていただいている作家さんの作品に変わりはないのですが、いつもとは違う組み合わせを楽しみながら考えています。

──倉庫でもあるので、段ボールに入ったままの作品もある。雑然とした雰囲気も面白いです。

そうですね。ここまで「作品の舞台裏」を見せることはないですよね。VOILLDは個展を開催する機会が多く、一人の作家さんの新作を発表することがほとんどです。KAIKA東京のストレージのように同じ空間にいろんな作家さんの作品が並んでいる状態は見る機会があまりないので、鑑賞する方も違った楽しみ方ができると思いますよ。

ずっと変わらない浅草が好き

──伊勢さんから見て、KAIKA東京がある浅草エリアはどう映っていますか?

浅草は、昔から大きくまちが変わらないところが好きです。東京スカイツリーができたインパクトは大きいけれど、それ以外の風景は昔のまま。アサヒビール本社ビルと金色のオブジェがあり、隅田川は相変わらずちょっと澱みながら流れている。再開発で一変したり、急に人気が出て一気に人が押し寄せることもなく、浅草ならではの佇まいが息づいていますね。

──VOILLDとして、今後KAIKA東京でやってみたいことはありますか?

作品の入れ替え頻度を上げて、五反田のギャラリーとは違う作品を置いてみたいですね。アートストレージを実験的に使えたら面白いなと考えています。宿泊者のみに開放するギャラリーなので一期一会のアート鑑賞ですが、その中の一人でもVOILLDに関心を持ってくださったら嬉しいです。あとは、KAIKA東京の屋上でぜひお祭りのような催しごとをやっていただきたいです(笑)。

 


伊勢春日さんのお気に入り東京アートスポット

日常に潜む“アート散歩”を楽しむ

私は“いかにもアートな場所”よりも、日常の中にアートを感じることが多いです。KAIKA東京に泊まるなら、雷門から仲見世を通って浅草寺まで歩いてみてください。お土産の刀を見ていたら、急に老舗の鰻店や寿司店が現れたりして、まちの雑多な営みがひとつの表現にようにも見えてきます。想像を超えてくる浅草の風情に刺激をもらえると思います。

原宿で、手に取って買えるアート体験を

原宿のMoMAデザインストアは、アートプロダクトを実際に手に取って買えるお店です。MoMAロゴのTシャツから草間彌生のタオルまで多彩なグッズが並んでいて、感性のウォーミングアップにもぴったりです。ギャラリーでの作品との出会いを、より身近に感じさせてくれる場所です。

アートと賑わいが楽しいまちで1日を過ごす

上野は、美術館や博物館が集結するアートエリアとしておすすめです。広々とした上野公園はアート関連施設のほかに個性豊かな植生も見られるし、動物園もある。年末年始の行列で有名なアメ横は、海産物から個性派ファッションまで雑多なショップが軒を連ねていて、まち歩きを満喫できます。


伊勢春日 / VOILLD

ファウンダー/ディレクター

2014年にVOILLDを設立。ギャラリーにて様々なメディウムとバックグラウンドを持った作家陣と共に、独自の視点で数多くの企画展やプロジェクトを展開する。総勢50組に及ぶアーティスト・クリエイターなどが出店するアートイベント「TOKYO ART BAZAAR」の主催をはじめ、アーティストマネジメント、広告制作、出版、プロダクト開発、企業とのコラボレーション等、多岐に渡るプロジェクトを行っている。加賀美健とのPodcast「アートでもないこうでもない」が毎週水曜に好評配信中。

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