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佐野文彦

/ Fumihiko Sano Studio

建築家/美術家

  • NARA

MIROKU奈良の滞在で感じる、奈良が育んだ自然物のチカラ

MIROKU奈良の設計者の一人で奈良県出身の佐野文彦さん。佐野さんが手がけた地下の空間やエントランスの外構は、素材の形を極限まで残した造りが特長です。今回は、美術家でもある佐野さんならではの設計と奈良の魅力について話を聞きました。

MIROKU奈良で、素材の凄みを堪能する

──佐野さんが手がけた地下の宿泊者専用ラウンジ『ティ―テーブル』では、日常から離れて旅気分に浸れますね。

奈良でやるのだから、プリミティブな材料の見せ方や工法で、大らかな空間にしたかったんです。部材の割りが大きくて、素材そのものがゴロゴロと見える空間を目指しました。

──地下の空間は、とくに大きな岩や木の存在感がすごいです!

地下ラウンジのテーブルの脚は、奈良中西部を流れる飛鳥川流域で採取される飛鳥石で、素材の見せ方を考えながら選んで配置しました。また、カウンターは直径1メートルの吉野杉の原木をギリギリまで生かしたデザインです。
地下の客室にも吉野杉の丸太がドンと立っています。一般的に客室で使う丸太の10倍以上の丸太を使い、吉野杉を感じる空間にしました。

──佐野さんが使った素材の多くは、奈良県産ばかりだったと聞きましたが…..

そうですね。例えばエントランス外構にある版築(はんちく:土を強く突いて固めて堅固な土壁を作る工法)も、奈良の土を使っています。色粉を入れていないので、自然な色違いの層を楽しんでもらえると思います。

──無意識に素材の力を感じて、ラウンジに長居したくなるのかもしれませんね。

吉野の岩神神社をご存知ですか? 巨大な一枚岩がそびえていて、目の当たりにすると磐座信仰(磐座:神が宿るとされる石)を身体で感じられる。昔の人たちが、巨石の前に拝殿を建てて拝んだ気持ちが理解できる場所なんです。

──岩は言葉を発しないけど、人として感じるものがあるということなのでしょうか?

人は勝手に、岩神神社の一枚岩の前に立って「すごいな」と思うんでしょうね。

佐野さんの思考から、MIROKU奈良の成り立ちを辿る

──MIROKU奈良の設計は、佐野さんの中でどんな思考過程を辿ったのですか?

まず、僕の中に数寄屋・見立て・もの派という3つのスタンスがあって。数寄屋は、数寄屋大工の頃に材料で遊ぶ要素を学んだ背景があります。見立ては、千利休が茶の湯で見出した、本来その場で使わないものを意味を置き換えて使う手法が元です。これは、マルセル・デュシャンが始めた現代美術のスタイルに近いと言われてます。

──現代美術からも着想を得ていると。

僕は元々アーティストになりたくて、独立後にアートでの表現に関わるようになりました。アートのことを考えるうち自分は現代美術の中で、もの派と言われるスタイルに近いことをやりたいと気づいた。もの派は木や石などのモノをそのままの状態で使って、もの・人・空間の関係を表現するスタイルです。

数寄屋大工の頃に、素材はそもそも材料でありモノだけれど、モノをモノとして見てそこに入っている形を想像した経験があります。この経験がもの派への興味に派生しました。

──MIROKU奈良の設計は、もの派のアプローチですか?

はい。その素材でしか表現できない顔を大切にしたかったので、素材を仕上げすぎないよう意識しました。地下ラウンジの荒壁は見ましたか? 荒壁は中塗りの後に化粧仕上げをするので、本来は完成した空間では見えない。でも、MIROKU奈良では荒壁に割れが出て色が変化してもいいと思って。荒壁という”顔”が露出して空間が成り立っているのが面白いのです。

奈良のお気に入り紹介

──佐野さんが考える奈良の魅力とは?

観光地化していない地域を含め、まちも人の気質も大らかなところです。昔の大寺院が多く残っていて、1300年前の平城京誕生前後に中国大陸から入ってきたものをスタディしたことがわかる。中国から入った文化と日本が古来持っていた文化が融合して、今の日本的なものになる過程を感じられます。

──京都にある緻密な建築物より前の時代に作られたものですね。

奈良の建築物は再建しているものもありますが、基本的には鎌倉時代以前のものが多く、そこに大らかさを感じます。

──奈良の旅行は、東大寺の大仏と鹿せんべいをあげるのが定番ですが、足を伸ばせば『古事記』の時代をなぞる旅もできますよね。

南部も含めて、奈良という地域そのものを見に行く旅は良いと思いますよ。


2泊3日で奈良市内から南下する旅
奈良は観光地が密集しておらず、移動に時間がかかるんです。1日目は興福寺・東大寺・春日大社の定番を回り、2日目に法隆寺・法華寺・法起寺、3日目は南下して天理の石上神宮や桜井市の大神神社、長谷寺や室生寺に行くのはどうですか。南に行くほど山の中に入り、まちがゆったりしてきます。

きなこ団子と要塞化したまち見学
大和八木駅の近くにある『だんご庄』のきなこ団子がおすすめです。その後は町家が残っている今井町に行ってみてください。お寺を中心に濠跡があり、外からの侵入者を拒絶して自治をしていた様子が見られます。

二月堂で体感する日本文化の始まり
一度見てほしいのが東大寺二月堂のお水取り。松明が先導して、お水取りの行列が進むさまを見るのはすごい経験になります。752年から続いていると言われており、日本の文化の始まりの儀式を感じられます。


佐野文彦 / Fumihiko Sano Studio

建築家/美術家

1981年奈良県生まれ。京都、中村外二工務店にて数寄屋大工として弟子入り。年季明け後、設計事務所を経て、2011年独立。現場の経験から得た工法や素材、寸法感覚を活かし、コンセプトから現代における日本の文化とは何かを掘り下げ作品を製作している。2016年には文化庁文化交流使として16か国を歴訪し、世界各地で現地の素材や文化、工法などを取り入れながら地域の人々と共に「もてなしの場」としての茶室を作るプロジェクトを敢行。帰国後も様々な地域の持つ文化の新しい価値を作ることを目指し、建築、インテリア、プロダクト、アートワークなど、国内外で領域横断的な活動を続けている。 EDIDA 2014 ELLE DECOR Young Japanese Design Talent、IF DESIGN AWARD 2020、2016年度文化庁文化交流使、Dezeen Awards shortlists、FRAME AWARD nominate、Awards 、IDEA-TOPs nominate、等多数

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