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北陸で起きていることのレポート、ローカルで活躍する人々のインタビューを通して、ここにしかない価値を掘り起こし、発信します。

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“まちとひとを数珠つなぎする”能登を明るくする平成の若旦那。
石川

今回フォーカスするのは、石川県・能登エリアの中心地、七尾市で生まれ育った森山明能(もりやまあきよし)さん。
本業は「七尾自動車学校」の跡取り息子でありながら、民間のまちづくり会社「御祓川」にも携わる森山さんは、スーツ姿で会議に出席したかと思えば、荒れた日本海で漁師とともに漁船に乗り、また田んぼで農作業をしたかと思えば、コスプレしながらツアーアテンドをこなす。七変化のごとく身に纏うアイテムを変えながら、能登、金沢、東京、そして全国と行脚を続ける姿は、「実はどこでもドアを隠し持っているのでは?」と疑いたくなるほど(笑)。これほどまでに軽いフットワークを持ち、アメーバのように形を変えて動き続ける森山さんの原点とは?そして、HATCHi とコラボレーションをしたならば、一体どんなことが起きるのだろう?今回は、「あんなこといいな、できたらいいな」という妄想話を含めた、なんでもありのトーク内容に迫ってみます。(ライター:喜多舞衣)

“人に会いに行く”が、旅の新常識。

和倉温泉から能登島へ渡る「能登島大橋」

七尾市は、和倉温泉という全国有数の温泉街を持つ“奥能登の入り口”とも言えるまち。また、穏やかな七尾湾に面する港町でもあり、野生のイルカに出会えるツアーや自転車でサイクリングツアーなど、マリンシティを楽しむアクティビティがたくさんある場所です。しかしその昔、“石川県で一番汚いドブ川”と言われていた御祓川が市内を流れていたということで…、この川を浄化すべく立ち上がったのが、まちづくり会社「御祓川」の始まりというわけ。そこで行われている“まち・みせ・ひと”育てこそが、今の森山さんをカタチづくる原動力となっているようです。

森山:僕のいう“いいまち”っていうのは、自然資源・地域経済・人材資源の“3つの循環があるまち”なんです。それがいわゆる“まち・みせ・ひと”育てということ。そのために、「能登スタイルストア」というWEBショップだったり、「うまみん」という観光プログラムだったり。あとは「能登留学」という地域の課題解決型インターンシッププログラムをやっていたり…、あ、去年11月には「御祓川大学」という、市民大学までつくってしまいました。
 
いきなりの先制パンチというか(笑)。ちらっと聞いただけでも幅広い手札を持ってますね。
森山:たしかに(笑)。ただ「御祓川」という会社は、まちづくりの担い手に向けて、チャレンジをサポートする支援をワンストップで提供できるのが強みだな、と。だからそれを最大限に生か すために、全てをひっくるめた「御祓川大学」をつくったという流れです。元々銀行だった建物を改修して、コワーキングスペースやチャレンジショップも併設しているので、「御祓川大学」を拠点に地域がより充実していけばいいなと。そうすることで今、まちづくりに興味のある“地域外”の若者も集まってきている。そんな環境が生まれつつありますね。
なるほど。「御祓川大学」って、参加する若者層と HATCHi のターゲット層がなんだかすごく近しいイメージですね。というのは、“地元で頑張ってる”人たちと、“地域の人たちと交流したい”と思ってる人を、うまくつないでいくような場所でもあるってことですよね?
森山:まさにそうですね。それでいうと、僕以前に東京・丸の内で開催されている「丸の内朝大学」というプロジェクトにコーディネーターとして関わっていた時があるんですけど、地域プロデューサーを育てるクラスがあって、そこに参加してる人たちを能登島で受け入れたんです。その時、能登島が流刑地だった歴史になぞらえて「うれし!たのし!島流し」っていうプロジェクトをクラス受講生や地元の皆さんと一緒につくったんですね。
あれ、なんだかどこかで聞いたことあるタイトル…(笑)
森山:内容はというと“新鮮すぎる魚しか食べられない刑”みたいに思わず喜んじゃう内容なんですけど(笑)、でも島流しって“刑”だから、寒かったり重労働だったり、「え、これお客にさせるの?」みたいなことまで、地元の人と一緒に関わりながやってもらう。すると、どんなことが起きたかというと…、なんとリピーター率7割という驚異のリピート率を叩きだすプロジェクトに成長して、今でも継続中なんです。(写真は、島流し“ところん泥んこの刑”)
リピーター率7割!普通の観光体験プログラムじゃ有り得ないですね…。
ということは、いかに“人と人が深くつながることができるか”ってことが大事なわけだ。
森山:あれが食べたい、こういう景色が見たいじゃなくて、結果として「あぁ久しぶり!」と言える対象が能登島内に生まれて、その人を自分の友達に紹介したくなる。すると、わざわざ個別で訪問してくる人たちなんかも生まれてきたわけです。すると、どんどん島に顔見知りが増えていくという。
旅って非日常を求める概念が今だ根強くある一方で、その非日常の中にある“日常”に、自分が溶け込んでいく感覚を求める人も多くいますよね。外からいいところだけを眺め続けるんじゃなくて、一度内側に入ってみてから、一つ一つ感触を確かめていくような旅が、若者の中で主流になってきている気もします。だからこそ、ガイドさんがその地に根ざしているほど、観光客もごく自然にその輪の中に溶け込んでいける。
森山:ガイドを介して、見ず知らずのまちに、自らをぐぐぐっと寄せていく感覚ですよね。
僕、自分で最近言ってるのは、「能登の観光案内させたら5本の指に入るぞ」って(笑)。
仕事柄というのもあるんですが、やっぱり住んでるからわかることはあって、農業の話も漁の話も、祭り論も話せるガイドって、なかなかいないだろうと。
だから、観光客だと普通触れ合えないけど、地域に住んでる面白い人たちの生き様を巡れるツアーがあったら面白いよねって言ってるんです。例えば、漁師と船に乗って朝ごはんを食べるとか、能登島で野菜作ってる人と料理するとか。あ、そうそう、奥能登で日本で唯一七面鳥を生で出せるすごいじいちゃんがいるんです。肝臓とかを料理に出せちゃうから、そのじいちゃんと一緒に東京のレストランとか行くと、シェフから超リスペクトされまくるという(笑)。

もう、すでに会ってみたいです、そのじいちゃんに。こうやって実際に話を聞きながら、現地を巡ってその場で一緒に食べれたら、美味しいものも、より美味しくなりそうですよね。

まちの文化が、ホテルをジャックする!

「能登を明るくする男と書いて“明能”と読む」なんて、自身の名前を語る森山さんですが(笑)、ハハハと笑う豪快な笑い声とともに、話をしながらどんどん新しい案を生みだし周りを明るく巻き込んでいく姿をみて、思わず納得。そんな森山さんが HATCHi とコラボしたら一体どんなことができるだろう…?話は、今後の展開に及んでいきます。

HATCHi はホテルだから、飲食も物販もイベントスペースも、泊まれる機能まであるわけじゃないですか。とすれば、例えばそれらを最大限に利用して、ホテル全体を能登がジャックする!みたいな期間をつくるのはどうでしょう?
森山:面白いですね!食べる、買う、泊まる、要はそれって全部暮らしの機能ですよね。例えばしつらえ一つとっても、能登のとある地域ではどの家でも見かけるものがあるとか、ある時期になると玄関に柿や大根が干されているとか。そういう暮らしの風景をどこまで表現できるか。あと、能登といえば祭りなので、その文化みたいなものまで表現できたら絶対に面白いだろうなと思います。
ホテルのエントランスに大根が干されていて、イベントスペースでは祭りが行われている。なんだかちょっと想像するだけでもすごいですね。
森山:春先なら五穀成就を願い、夏は疫病を追い払い、秋は五穀成就を祝う祭りでそれぞれ山
車やキリコ、獅子舞とカタチも様々ですからね。僕なんか、GWは七尾で一番大きな青柏祭という祭りの練習のために4月の週末は全部潰れますし、7月の週末はどれも全て、能登中の祭りに行ってますから。(写真:七尾駅前の御祓川大通りで行われる、青柏祭の曳山行事「でか山」。中央に乗っているのは森山氏!)

七尾駅前の御祓川大通りで行われる青柏祭の曳山行事「でか山」。中央に乗っているのは森山氏!
日本三大火祭りの一つ「向田の火祭」。毎月七月の最終土曜日に行われるダイナミックな夏祭り。

自分のまちの祭りを語れる人って結構いますけど、ここまで祭りを多角的に語れる人って、そうそういないですよね、森山さんみたいな人じゃない限り。じゃあ、お祭りが一番多い7月の毎週末を、“能登祭りウィーク”とかにしてジャックしちゃいましょうか。
森山:いいですねぇと思ったけど、いやいや僕、その時期は能登に入り浸るので、HATCHi に行けないじゃないですか(笑)

“つながり”と“ひろがり”をデザインしていくということ。

金沢の中心地にある HATCHi で、七尾や奥能登の暮らしや文化を五感で感じることができたら。さらには、北陸のさまざまなエリアの文化が、定期的に HATCHi の中で繰り広げられたら。それは“ホテルがまちに還元する”という既存の考え方から一歩進んで、
もはや、“まち自体がホテルの中に入ってくる”という、そんな場所になるかもしれない。

森山:金沢に初めて来て HATCHi を利用した観光客が、いきなり奥能登に行くことはないかもしれない。でも、金沢の魅力に理解を示した人が2~3回目に金沢を訪れた際に、能登や七尾に来てくれたら僕がアテンドをする。そんな流れを順繰り順繰りつくっていけるといいなと思いますね。定置網のように奥に進んでいくことで、最終的にはうまくハマって居着いてしまうみたいな(笑)でもそれって、地方の観光や移住定住促進には大事な考え方だと思うんです。だからこそ HATCHi がまさに出発点となってもらえれば、僕たちが能登で受け止める役割を担えるでしょ。実はいま10月オープンに向けて、七尾でゲストハウスをつくっている最中だったりするんです。
石川県として広域エリアをどうデザインするのかと考えたら、金沢と能登の関係性、そして金沢と加賀、加賀と能登みたいに、エリア間での関係性はとても重要になってきますよね。
森山:加賀も、福井や富山もそれぞれ面白いですからね。県内や近隣県が連携するつながりって、実は全国的にみてもそんなに突出した事例ってないでしょ。だからこそ、HATCHi が北陸への“発地”機能を発揮してもらえたら、素敵なことが起こる予感がしますね。
金沢にも七尾にも奥能登にも、東京にも属するコミュニティがあって、その循環の中で自分の仕事を持っている森山さん自体、まさしくその最たる例のような気もしますけど。
森山:僕がよく言ってるのは、「若旦那だからこそできる仕事がある」ということ。完全なるサラリーマンだったら、多分ここまでできてないはずだし。ただ、僕みたいに割り切って外に出ること を決意して、外で遊ぶことを積極的に「是」としてやってる跡取り息子って、やっぱり少ないですけどね…。
なるほど…。じゃあ「若旦那」として、森山さんが HATCHi に来るとしたら、どんなことをやってみたいですか?
森山:僕のポリシーは「誘われた飲み会は断らない」ということ(笑)。だって誘われたってことは何かしらの理由があるわけで、もしかしたらその日、超面白い出会いがあるかもしれないわけでしょ?その可能性を捨てないっていうのは意識してます。
だから、僕が月に何回かバーテンダーになって人生相談を聞くのもいいかもしれないし、能登の職人さんやシェフを呼んで、みんなで食べながら語れる場をつくるのもありだし、「御祓川大学」の単発講座を開講してもいいですしね。きっとこれからちょくちょく「HATCHi」に顔を出すと思うので、みなさん僕を見つけたら声を掛けてくださいね。
ぜひ一緒に飲みましょう!

観光客だけじゃなく、ふらっと立ち寄った一見さんや、近所に住んでいる地元のひとまで。誰もが気軽に交流することができる、地域に開かれたシェアスペース HATCHi。そこに、森山さんのような地域で面白いことを仕掛ける“ローカルびと”がたくさん訪れることで、人々のアイデアやライフスタイル、また地域の資源やコンテンツが集まる“地域のるつぼ”のような場所となるに違いありません。金沢というまちのど真ん中にありながら、フラットに開かれたこの場所が、さらなる新しい文化が生まれる拠点になるように。北陸から日本中、そして世界へとつながる“発地”、ここに宿るその息吹をぜひ確かめに来てください。

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